『ワンダー』 R・J・パラシオ著 中井はるの訳

今回は全世界で1000万部を超えるベストセラーとなっている児童書『ワンダー』という書籍です。フィジカルクラブで出会った医学生さんから紹介していただき、早速読んでみました。

この話は既に映画化されており、2018年6月より日本でも公開されています。

児童書とは思えないほど考えさせられます。身体に障害を持って生まれ、フツウの人とは少し違った顔のワンダーが学校という社会に飛び出し、現実と戦うお話しです。

医療人としても、『偏見』ってどこから生まれるのだろうか。と考えさせられます。オススメです!

 

ネタバレしないよう、ここでは作品内で出てきた、ブラウン先生の格言を少し私なりに考えてみようと思います。

正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときには、親切を選べ。  ー ウェイン・W・ダイアー

この言葉の意味は非常に深い!

正しいと思うことが必ずしも正しいとはかぎりません。たとえば、戦争は国と国の正しいことのぶつかり合いです。でも、親切な優しいことがぶつかり合うことはありません。

正しいと思っていた治療も実は患者さんの命を縮めていたということもあります。正しいだけではよくないんですね。「親切」がやはり医療人にも重要です。

あんまり必死にかっこつけようとするな。ぜったいバレバレで、かっこいいもんじゃない。

なにかをやるときに、綺麗に済まそうとか、よく見られようとか思うと、本当の自分が出せず、相手の心をつかめないことは多いです。特に人に何かを教えたい、伝えたいと思うとき、台本をキッチリ準備して、台本を読むようにお話ししても納得はさせることはできても相手の行動を変えることは非常に難しいです。

でもかっこ悪くてもその人らしさが見られれば、相手の心を開くことができるとぼくは信じています。だって、人間だもの・・・

今をただ生きろ。太陽をつかめ!

今を生きることの大切さをこの本も伝えています。太陽をつかむほどの情熱をもって、現状の辛さに挫けることなく、未来を憂うことなく、今を生きたいですね。

ママの言葉より・・・「オギー、いつでもどこにでも意地悪な人っているのよ。だけどママが信じてるのは、この地球上には悪い人よりもいい人が多いってこと。いい人たちが、おたがいに見守ったり助け合ったりしているの。」

私達が悪い人になってしまったら、救う人はもう他にいないかもしれません。そう思いながら私が医療人としてこの本で感じたことをまとめてみます。(注:この本には医療の話はほとんど出てきません)

・われわれ医療人も人間

・医療人は全ての人間という治療対象者に偏見を抱くべきではない

でもどうでしょう。過去の歴史を振り返っても、私達医療人がまず最初に病人や社会的弱者へ偏見・差別の眼で見てしまってはいないでしょうか?

例えば・・・

・同性愛者

・ある特定の感染症患者(HIV、結核、ハンセン病など)

・生活弱者(生活保護受給者、ホームレス)

などなど。現場を見ても明らかに上品な患者に対する対応とこういった弱者への対応が違っていないか、もう一度自分自身を振り返るべきと考えました。

さらに、逆にわれわれ医療人こそこういった人達へ救いの手を差し伸べられるのではないでしょうか。一昔前には同性愛者は差別の的でした。しかし今は時代が変わっています。われわれ医療人は全ての人を対等に、そして守る立場として正しい情報と優しい声と温かい手を指しのべるべきではないか。と、真剣に考えました。