80代女性、右眼が上転しない!ーバセドウ病眼症ー
80代女性定期受診の患者でしたが、眼球運動障害を認め、その原因は背景のバセドウ病であろうとの考察。右眼片側の上転障害を認めました。
ここで、バセドウ病眼症と眼球運動障害について、まとめておきます。身体診察シークレットには以下の記載があります。
Graves病による眼球運動麻痺とは何か?
Graves病でみられる外眼筋の炎症、浸潤、怒張、および麻痺である(しばしば、眼球突出性あるいはうっ血性眼球運動麻痺とよばれる)。しばしば内側下直筋が侵されるが、外眼筋の運動麻痺や運動障害も起こし、筋力低下や弱視、上方注視障害、輻湊障害、斜視、視野欠損、注視制限や視力低下も起こす。眼球後退や眼瞼遅滞はどんな甲状腺機能亢進症の患者でもみられる。Mueller筋の交感神経機能亢進によっておこる症状であり、ホルネル症候群での眼瞼下垂を起こす筋と同じである。ローゼンバッハ徴候も神経機能亢進の結果起こる。
生理的所見、hippus(瞳孔跳躍)
動画と言いますか、その場で動画を撮りながら披露した所見です。意外と知られていない瞳孔跳躍は、生理的所見で、一定の光をあてると、瞳孔は大きくなったり小さくなったりと繰り返します。
この所見は、マーカスガン瞳孔やadie瞳孔などの診断時の鑑別所見となります。
50代男性、-15kgの体重減少、四肢・口の不随意運動
この場で再現することは困難ですが、口周囲の不随意運動、手をくねくねと動かすアテトーゼ様の運動を認めました。さて、原因がなんだろう?ということで盛り上がりましたが。
30代女性特発性舌下神経麻痺!
喋りにくさを主訴に来院した女性。舌を診察擦るとウネウネと動く舌。
舌下神経麻痺⇒挺舌で病側へ偏位というのはよく知られていますが、患者は「舌下神経麻痺が出たので診てください」という訴えではなく「喋りにくい」「ベロが変」という訴えで来院するので、開口時にもしかしたら?と気がつけるかがポイントになります。
見破るポイントは、開口すると麻痺側の舌がもっこりふくれあがるという所見です。
80代女性、頚部のドキドキ、動脈?静脈?気管?
論争勃発!!頚のドキドキど~なっとるねん!?という疑問から、頚部の拍動についてバトルが繰り広げられました。
ここではあくまで一般論で記載しますが、現場は一般論ほど簡単ではない。ということが重要で、こういう勉強会で共有することが重要だということが証明されたような議論でした。
頚部が拍動する原因はもちろん動脈だけではありません。その原因には、頚動脈(生理的・病的)、頚静脈(生理的・病的)、気管(病的)があります。「そんなの簡単じゃん」という声が聞こえてきそうですが、拍動が分かりにくくなる要因がいくつかあります。
①拍動の場所がおかしい
頚動脈は生理的はのど仏の少し外側で拍動を観察できます。しかし、蛇行して頚部正中、まさにのど仏付近で拍動を認めることがあります。
類似した所見として、気管が拍動するオリバー・カルダレリ徴候との鑑別は困難になります。オリバー・カルダレリ徴候とは「気管ドキドキサイン」のことで、主気管支をまたぐ大動脈の異常(大動脈瘤・大動脈瘤)や縦隔病変の際に拍動が気管に伝わり、気管が拍動するという所見です。
②拍動の波形がおかしい