第2回 無修正♡動画俱楽部♡を振り返る

無修正♡動画俱楽部は患者さんの命を救って初めて、参加の意味をなします。

 

1.患者さんへの敬意

2.勉強のための勉強にしない

3.楽しみながら学ぶ

 

今回はより、「学んだことを伝えよ」をモットーにやっていきます。全部で約20の動画が出ましたが、もう一度振り返りながら学習を深め、明日の臨床に役立てていただきたいきたいです。

とことん極めて、臨床力を上げてください!!

1.急に出現した「かちんこちん歩行」の原因は?

60代男性、半年前から左手の力の入れにくさがあり、約1週間前から急に両下肢に力が入りにくくなった。下肢脱力が進行し、歩行困難のため救急搬入された。提示された動画を参加者が言葉で表現すると、「wide base」「前屈」「両膝が曲がっていない」「やや突進様」といった声が挙がりました。

似たような動画を発見しました!

そう、医学用語で表現すると、おそらくspastic gait(痙性歩行)、spastic limbsと言われるようですね。片側性の麻痺(例えば脳血管障害)ではぶんまわし歩行が有名ですが、両側の障害ではぶん回せず両膝が曲がらない(というか大腿が挙がらない)に見えます。

これは脊髄疾患に特徴的な歩行のようで、脊髄損傷、脊髄症、ビタミンB12欠乏などとかなり疾患が絞ることが可能です。


提示された患者さんはその他両側下肢の腱反射の異常な亢進を認めました。さらに入院後膀胱直腸障害も出現、最終診断は固形癌(おそらく胸腺癌)の脊髄転移(頚髄)転移という診断でした。

言葉で言われるとぱっと浮かびますが、動画から、これは痙性歩行だ!という言葉は参加者からは挙がりませんでした。まだまだ、見て学ぶ必要がありそうです!

歩行障害の用語だけまとめてみました。それぞれで動画を引っ張ってくるとものすごいことになりそうなので、今回はどの用語に当てはめるかのみまとめておきます。

今回の症例では痙性対麻痺歩行spastic paraplegic gaitということになりますが、教科書だけ参考にしていると、両側ぶん回し歩行様にも見えてしまいますが、まったくぶん回していませんでしたね。前傾でひざが曲がった状態で固定され、歩隔が広く、ぺたんぺたんとサンダルをならしながらの歩行でした。

対麻痺歩行はぶん回さない!と覚えておきましょうか。

脊柱管狭窄彰はコモンな疾患なので、再度動画は見られるでしょう!

2.顎の震えが止まらない!

80代女性急に出現した顎の震え動画の提示。結局原因が分からなかったのですが、翌日には軽快していたようです。寒気だった可能性はありますが、検索するとパーキンソン病による顎の震えというものを見つけました。同じようなふるえです。


ちなみに第1回でもオススメされていたふるえの本はこれです!

 

不随意運動は第1回で詳しく分類しています。

ご参照下さい

3.顎を叩いたら震えが止まらない!

俱楽部内で紹介された顎の震えの別バージョンです。NEJMのpictureとして紹介されたこの動画は、「顎クローヌス」と呼ばれ、上位運動ニューロン障害で出現します。動画のケースは筋萎縮性側索硬化症(ALS)だったようです。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1809249

 


4.「手あて」でチュッ

顎シリーズ3つ目です。なんと偶然今回は口周りが多かった!

50代男性腰痛で動けなくなり来院した患者、背景に高血圧・統合失調症がありました。手をこすってみると、口がチュッとした動き!

これは「手掌オトガイ反射」と呼ばれる反射です。

▶方法

母指球筋を近医から遠位へ強く素早くこするこする。すると、口をとがらせた様なチュッとした動きになる。(感受性が高いのが母指球筋で、実は皮膚のどの部位でも起こりうるとの記載もあります)

 


▶病的意義

実は正常でも見られることもあるよう。何かに集中していると口が尖ることもあり、オトガイ筋のことを英語でmentalisと呼ばれる語源だそうです。前頭葉機能障害、パーキンソン病が有名ですが、水頭症、認知症、統合失調症などでも見られるようです。

と言うわけで、我々は普段見過ごしている可能性が高いと言うのが結論になりました。

次回動画俱楽部までの宿題①

『手あてでチュッ』の動画を撮影せよ!

5.「手のこわばり」を見たら叩いてみよ!

手のこわばりを主訴にリウマチ科外来を受診した患者さん。

リウマチ科を受診する患者が必ず膠原病とは限りません。かなり教訓的です。


筋強直性ジストロフィーに特徴的なミオトニア(筋強直症)はこの動画でも分かるように、しっかり握手をした後、離しても手が広がりません。

これは患者が「手のこわばり」として受診してもおかしくはありません。合わせて舌も叩いてみるといいかもしれません。

6.咽頭ドキドキはMullerだけじゃない!~さらに口シリーズが続く~

初めて聞いた所見の一つ。咽頭ドキドキサインは大動脈弁逆流で診られるMuller徴候しかない、と思っていました。しかもARでこの徴候が診られるのは滅多になく、レアフィジカルです。しかし、今回提示されたのは、動画がどこにも見つかりません。

頚動脈蛇行による咽頭拍動です。ただし、Muller徴候と違うのは片側性の拍動であるということです!

この所見が誤嚥と関連するのではないか、という研究がされていました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3205819/?fbclid=IwAR3ZF7HMMpW45GjHW4TSn6J98glC11i4UubVOEr6LidyI0jsYYGo1tZPMhE


さらに検索すると・・・咽頭違和感や嚥下時違和感を主訴に来院したという報告が散見されました。

喉の違和感を診たら探しに行きたいですね~!

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/89/1/89_1_63/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/85/8/85_8_1281/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/14/3/14_174/_pdf

7.拡張期雑音を診たら、これも!

50代の男性、大動脈弁領域の拡張期雑音を聴取し、爪を圧迫すると・・・赤/白/赤/白、拍動が見えます!これはクインケ徴候と呼ばれます。

 

ただ~し!ARに特徴的徴候ではないことに注意。hyperdynamicな心臓の状態なら診られえます。私は尿路感染の敗血症患者で診たこともあります。


ちなみに、クインケ先生(1842-1922)はドイツのお医者さんですが、この徴候で有名ですが、実は、治療・診断目的での腰椎穿刺を初めて行った人物で、また膿胸患者への外科的ドレナージを初めて推奨した人物です。こちらの方が医学界ではより貢献していますが、この特異的でない徴候で名が残っています。

8.エコーだって動画俱楽部!

呼吸困難で来院した80代女性、1型呼吸不全。その原因は・・・・

下肢は腫れても痛くもないけど、エコーをあてると、なんと!

DVTはベッドサイドのエコーで見破れ!

大腿部にエコーをあてると、大腿静脈を圧迫してもへこまない!


深部静脈塞栓症のうち、1/3は無症候性肺塞栓症を合併しているという報告もあり、DVTとPEはセットでご注意を!

Stein PD,et al.Silent pulmonary embolism in patients with deep venous thrombosis: a systematic review.Am J Med. 2010 May;123(5):426-31

 

9.エコーだって動画俱楽部その2!

関節穿刺で、上手くエコーを使おう!穿刺時には、針先をしっかり捕らえてやるのが大事!

 


10.そして、エコーこそ最強の動画俱楽部!

80代呼吸困難、だが胸部の精査では異常なく、なんとなく、声が小さい。

その原因は、神経筋疾患か!?と悩み、四肢の筋線維束攣縮をとりに!

こんな感じの筋線維束攣縮を探しに行っても、待てど暮らせど診られない。

そんな時こそ、エコーで診てみましょう!


筋肉自体の視診で視えなくても、エコーでこのように筋の収縮がみられることがあるようです!

11.次回への宿題その2

今回50代失神患者で、HR150 でした。頚部で認めそうな、所見は何でしょうか?

という問題がありました。

そして、参加者はこれを疑ってしまうわけですが、、、これは逆の落とし穴ですね。

第1回で出たこの所見は診ると興奮します。

しかし、この所見はなく。

結果、「心房細動」でした。


でもみなさん、こんな経験ありませんか?HR150代・・・Afなの?PSVTなの?

ではこれを動画俱楽部で研究しませんか?次回までの宿題です!

 

次回動画俱楽部までの宿題②

頻脈性心房細動の頚部の動画を集めよ!(もちろんPSVTでも)

次回予告!

第3回無修正♡動画俱楽部は6月28日開催予定です。

お待ちしています!